bio_teq’s blog

〜実験手技や原理の覚え書〜

誰でも細胞培養~手順編①~

お疲れ様です!テックです!

今回は細胞培養の実際の手順について紹介していきたいと思います。

細かい部分はラボごとにルール等あると思いますので、あくまでも一例だと思って見てください。

 

細胞培養の手順

メディウム等を37℃のウォーターバスで温める

メディウム、トリプシン、PBS(-)は使う15分前くらいから温めておくと良いでしょう。

冷たいまま使用すると細胞の生育が悪くなる可能性があります。(絶対にダメというわけではないですが、、、)

 

②クリーンベンチの準備

スイッチをオンにして、5分くらいしてから使い始めます。

これはフィルターを慣らすのに必要で、きちんと無菌状態を作り、コンタミを防ぐことにつながります。

中に物を入れる前に、アル綿などで中を拭いてから使い始めるとGOOD!

 

メディウム等、必要なものをベンチの中に入れる

メディウムPBS(-)、トリプシンや安全ピペッター、ガラスピペット等をベンチに入れます。

ディスポーザブルタイプのピペットを使っているところはそちらを使いましょう。

いずれも中に入れる前にアルコールを吹きかけ、アル綿で拭いてから入れると良いでしょう。

 

④培養スタート!

ここでは75㎠のフラスコで接着細胞を継代するときの例を紹介します。

 

フラスコ内の培地をアスピレーターで抜く

PBS(-) 10ml入れて洗浄する

PBS(-)をアスピレーターで抜く

トリプシン1ml加え、37℃のインキュベーターで3分ほど静置する

顕微鏡で観察し、細胞が丸くなっていたらフラスコを軽く叩いて剥がす

すぐにメディウム9ml加えピペッティングで細胞を集め、50mlのコーニングチューブに移す

新しいメディウム10mlをフラスコに加え、さらに洗いこみ細胞を回収する(細胞の収率を上げるためにやっていますが、この手順は飛ばしても大丈夫です。)

220xgで4℃、5分遠心(万が一"xg"の表示が無い機械の場合、大体1000rpmくらいでよいと思います⇦一回だけ見たことがあります笑)

上清をアスピレーターで吸い取り、ペレットをタッピングでほぐす

10mlのメディウムでメスアップし、必要量フラスコに撒く(細胞ごとに成長速度が違うのでその都度調整するようにしましょう。週に2回程度細胞のメンテができる濃度にするのが良いと思います。)

フラスコを上下左右に数回ずつ振って細胞がフラスコ内に均等になるようにする

37℃のCO2インキュベーターに静置

 

⑤後片付け

クリーンベンチの中のものをすべて取り出し、中をアル綿で拭きベンチを閉じる。

 

手順としては以上になります。

 

細胞培養は注意深くやればうまく細胞を育てることができます。

もし苦手だなと感じている人がいるなら、ラボの先輩や培養歴の長い人にコツを聞いてみてください!

試薬や設備についての詳しい説明はまた別の機会に解説したいと思います。

また、次回の手順編では細胞の起こし方や凍結の仕方について解説していきたいと思います。

ここまで見ていただいてありがとうございました!

誰でも細胞培養~試薬編①~

お疲れ様です!テックです!

今回は細胞培養によく使われている試薬について解説していきます!

 

細胞培養に必要な試薬は??

細胞培養に必要な試薬は主に3種類あります。

メディウム

PBS(−)

③トリプシン/EDTA

 

①のメディウムは細胞の培養液です。

主に使われているものとして、DMEMやRPMI1640、Ham's F-12などが動物細胞でよく使われています。

DMEMは初代線維芽細胞、ニューロングリア細胞、HUVEC、平滑筋細胞や、HeLa、293、Cos-7、PC-12など多くの細胞で正常に培養することができます。

RPMI1640はHeLa、Jurkat、MCF-7、PC12、PBMC、星状膠細胞、癌腫などの細胞でもちいられています。がん細胞を扱っているラボではよく使用されています。

Ham's F-12はチャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO細胞)用に作られたメディウムです。

 

メディウムはそのものだけでは細胞の生育に必要な成分が足りてないため、細胞が育ちません。

そこで必要になるのがウシ胎児血清(FBS)です。

FBSの中には、約1000種類の成分が入っており、その中に細胞培養に必要な成分が含まれているといわれています。

生体からとるのでロットごとに成分が少しずつ違っている可能性があるため、新たなロットを使う際には細胞がちゃんと増えるか確認のためのロットチェックをする必要があります。

5%から10%程度の濃度で使用することが多いです。

 

他にはメディウム抗生物質を入れることもあります。

ペニシリンストレプトマイシン等を添加することで、コンタミを防ぐことができます。

しかしながら、抗生物質の継続的な使用が抗生物質耐性株の発生を促したり、抗生剤が細胞と相互作用する可能性もあり、実験に影響を与える場合があるので注意が必要です。

培養に慣れてきたら抗生物質を使わずに細胞を継代するのが良いと思います。

 

②のPBS(-)は細胞の洗浄(リンス)に使います。

PBSとはPhosphate-buffered salineの略で、日本語に直すとリン酸緩衝生理食塩水といいます。

細胞をリンスする理由は血清中に含まれる成分がトリプシンの作用を阻害し細胞が剥がれにくくなってしまうのを防ぐためです。

PBS(-)のマイナスはマグネシウムイオンやカルシウムイオンを含まないという意味です。

これらのイオンは細胞同士の接着に必要なイオンのため、取り除くことで細胞同士の接着が弱まり、剥がれやすくなります。

 

③のトリプシン/EDTAは細胞をフラスコやディッシュから剥離したり、細胞同士の接着を弱める効果があります。

トリプシンは細胞とフラスコの接着に使われているタンパクや細胞同士の接着に使われているタンパクを分解することで細胞を剥がすことができます。

タンパクを分解しているので、トリプシンの長時間の曝露は細胞自体にダメージを与えてしまうため、なるべく短い時間で処理しましょう。

顕微鏡で観察したときに細胞が丸くなっている頃が、目安となります。

これは、トリプシンによって切断された部分を保護するために、細胞がトリプシンとの接着面を減らすために球状になると考えられています。

EDTAが含まれている理由としては、マグネシウムイオンやカルシウムイオンをキレートしてくれるためで、PBS(-)と同じ理由です。

 

細胞培養に必要な試薬の解説は以上になります。

細胞株によって育ちが良いメディウムが違うというのは面白いですよね!

新しい細胞種を使うときは、どのメディウムが良いか調べてから使うようにしましょう!

次回の試薬編はコンプリートメディウムや、メディウムに入っているその他の添加物について解説したいと思います。

ここまで見ていただいてありがとうございました!